米が炊けるまでの話
昆虫見舞

8月6日(木)、冷汁の夜です。

 

 

ようやく梅雨が明け、朝から嬉しそうにセミが鳴いている。

なかには友達と喧嘩して泣いているセミもいるのかもしれないけれど、

とにかく夏らしい夏がやってきたのだ。

 

 

先日、夜中にコンビニへ行った帰りに道の真ん中でひっくり返っているカブトムシを見つけた。

飛行中に電柱にでもぶつかって脳震盪でも起こしているのか、大の字になって動かない。

電灯のスポットライトを浴びて、マクベスのワンシーンにも見える。

指先でつつくとまだ生きているので、轢かれないように道の端に寄せてやった。

 

 

ただこういう時、いつも迷うことがあって「君は一体どうしてほしいんだい?」ということだ。

本当はこのままにしておいてほしいのかもしれないし、高輪ゲートウェイに連れていって欲しいのかもしれない。

私には彼らの言葉がわからないので、なんだかもどかしい気持ちになる。

 

 

 

東京には自然がないなんて言われがちだが、

それでもこうして夜中のカブトムシに歯がゆさを感じたり朝起きれば蝉が鳴くのを聴ける。

たしかに田舎と比べればここいらの自然なんてハンバーグプレートのパセリくらいのものだろう。

だがその小さな環境で各々が儚くも力強く生きているのだ。

 

 

これまた先日、気分転換にあてもなく自転車を漕いでいると川沿いに出た。

住宅地の真ん中を通る小さな河川だが、つたって行くと時折近所の子供達が水浴びをしている。

綺麗な川なのだ。そんな風景を横目に見ながら行けるところまで行くと大きな公園に着いた。

 

 

自転車を止め、膝のあたりまで草の生い茂る道を歩いていく。

向こうに見える木々からは蝉の声。ウスバカゲロウの綺麗な羽。

マイナスイオンのジャスコである。

体が「おい碾法△海譴世茵△海海僕茲燭ったんだよ」と伝えてくるのがわかった。

それと同時に、これはあのカブトムシの声かもしれないと思って少し申し訳なくなった。

 

 

 

おやすみ日本

 

 

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お耳の恋人

7月30日(木)、スパイシー唐揚げの夜です。

 

 

今朝9時半過ぎ、iPhoneがブオッブオッブオッと鳴った。

緊急地震速報である。

次いで「強い揺れに注意してください」とアナウンスが流れる。

私はとりあえず部屋の中で、ミーアキャットのような姿勢で待ち構えた。

結局揺れは来なかったが、あの不協和音といったらない。

 

 

しかしなんというのか、目はしっかり覚めていたが、この音で不本意にも頭の隅々まで起こしてもらった感じがある。

人に危険を知らせる音だけあって、

なにか頭の中の動力のレバーみたいなものをガチャンと引き上げられるような感覚になる。

こう、見えないランプが点灯するというか。

何事もなくて良かったと思いつつ、そのままミーアキャットのような姿勢で仕事に入った。

 

 

そもそも今朝は目覚めが良かったのだ。

というのは、昨晩寝る前にグーグルネストミニというアメリカの雪見だいふくみたいな機械に向かって

「おやすみ」と言ってみたところ、「アラームをセットしてください」と返事がきた。

アラームはiPhoneでかけているので「アラームはいらんよ」と言ってもバカの一つ覚えみたいに

「アラームをセットしてください」と返される。

そんなに私を起こしたいのかと半ば恐れを感じつつ、要件に答えると「セットしました、おやすみなさい」

と、ここまではいい。

 

 

間も無くすると、なにやら鳥や虫の鳴き声が聴こえてくる。

だいふくの仕業である。どうやら私が行った一連のやりとりをすると、

最後に睡眠導入の為にリラックス音を流してくれる仕組みらしい。

しかし私はそこまで頼んでいないのだ。

おなかいっぱいなのにサービスでもう一品来ちゃったのである。

 

 

ところがこのサービス、端的に言うと最高で大げさに言うとこの一年で一番ぐっすり寝れた気がする。

というわけで連動して寝起きもよかったのだ。

 

 

機械にもおやすみと言ってみるものだ。

今夜もこれに頼ろうと思う。

 

 

おやすみ日本

 

 

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梅雨のボーカル

7月25日(土)、ジミー・ペイジの夜です。

 

 

今年はまだ梅雨が明けない。

私は梅雨の最中にこの世に生まれたものだから

この季節と仲良くやれるのだが、

友人知人と話している限り、

世間ではあまりそういう人は少ないのではないかと思う。

 

 

梅雨というのはあまり歓迎されないのだ。

始まるとため息をつかれ「こう毎日雨だと憂鬱になりますね」なんて言われる。

もういくつ寝るとお正月、なんて歌があるがこども達が本当に待ち遠しいのは確実に梅雨明けである。

とにかく夏が強すぎる。

梅雨は所詮夏というスーパースターの名もなき前座なのだ。

レッドツェッペリンとビッグエコーで歌う私くらい違う。

 

 

夏はセミに夕立に花火に太鼓に、自然も人も合わさってロックを奏でるが、

梅雨はただひたすら雨音で勝負する。ただこれはこれでとてもロックだとは思うのだが。

いや、いたいた、ちゃんとボーカルがいた。梅雨にはアマガエルがいるじゃないか。

夏はロック、梅雨はケロック。

 

 

こうして寒いことを言うとまた梅雨明けが遠のく。

 

 

おやすみ日本

 

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