米が炊けるまでの話
書籍のお仕事

 

 

 

 

 

 

 

 

9月6日火曜日。寺尾聡の夜です。

 

 

最近帰る前にスーパーに寄り、ルビーを一つ買う癖が付いた。

というのも、こんな経緯があったのだ。話半分で聞いてもらいたい。

 

 

ある夜、小銭を数えていた。部屋の中にはテーブルが二つあって、玄関に近い方の机には電子レンジ、オーブン、コーヒーの粉や払込用紙が置いてある。もう一つのテーブルは今こうしてキーボードを打ったり叩いたり投げ飛ばしたりする、いわばテーブルというよりかは、デスクといったものだろう。

 

 

そんな事はどうでもいいから小銭を数えていてどうなったのか早く続きを話したまえと声が聞こえる。

 

 

そう、テーブルで小銭を数えていたのです。そもそもがそのテーブルの上に、鍋を食べる時に使う取り分け皿くらいの大きさの碗があり、そこにタバコの釣り、ビールの釣り、ポテチの釣り、コーラの釣りを投げ入れていたのだ。だいぶ山になってきたなと気になっていたので、そろそろ数えてみようとつまみ始めたところ、およそ千円分の10円玉、5円玉、1円玉が入っていた。それを綺麗に100円ずつ積むと、その日は満足してそれで寝てしまった。

 

 

翌朝起きると、積まれた小銭がこっちを見ている。わけではないんだが、とにかく目に入るわけだ。小銭に見られるのもどこか落ち着かない。また碗の中に戻してしまえばいいのかもしれない。しかし、せっかく数えて小まめに積んだ小銭をそのまま戻してしまうんでは、最初から何もしなかったのと同じではないかというので、生産性の観点からこれはいただけないと背後霊が耳をつねる。ではと自分の財布を開くと、ひとかたまりだけ(110円)掴んで中に放り入れた。すると通常の思考回路の本線に一台のセルシオが入ってきた。運転席の窓が開く。「この金で1日過ごしてみろよ」こうして私の1日所持金110円生活は幕を開けた。

 

 

1日に110円しか使えないとなると、一定のものをあきらめるようになる。まず朝の缶コーヒー。自転車の駐輪場。昼の冷やしそば。夕方の缶コーヒー。…私の一定はこの四つである。という事は、なんら難しくないのである。自転車は無料駐輪場に置き、飲み物は麦茶を水筒に入れて持参、弁当持参、これでしまいである。別に110円あるので、缶コーヒーも買えなくはない。買えなくはないのだが、今日はこれしか使えませんというものを今日が始まった瞬間に使ってしまっては、残りの今日に申し訳が立たない。1日仕事を終え、さぁ最後に何を買おうかと意気揚々に110円で買えるものを選びたいではないか。

 

 

まあ別にそんな事もないのだがどういうわけだが心がそうと決めたようで、冒頭のルビーを買うに至ったわけである。

ルビーは98円。税込で105円。110円でもおつりがくるとは恐れ入ったね!しかしその輝きはまさに、宝石のようであったとさ。

 

 

なんていってる場合じゃないんだ。

 


 

 

書籍の装画のお仕事をしました。

 

リチャード・スティーヴンズ著/藤井留美訳

 

悪癖の科学 その隠れた効用をめぐる冒険(紀伊国屋書店発刊)

 

心理学の本ですが、セックス、酒、悪態等、キャッチーな題材を元にした実験の数々は雑学本としても楽しめると思います。

世間が眉を潜めるような行動も、実は効用があるのかも?答えはこの本の中です。

 

110円しか持ち歩かないのにもルビーを買うのにも何か心理的要因があるのかもしれないですね。

 

私は表紙と中の扉絵(一コマ漫画)を章ごとに描いています。装幀・組版はdesmoの後田泰輔さんです。

 

書店でお見かけの際は是非手にとってご覧くださいませ。

 

 

悪癖の科学-その隠れた効用をめぐる実験-リチャード・スティーヴンズ

 

 

 

おやすみ日本

 

 

 

 

 

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