米が炊けるまでの話
焼きうどん事件

7月12日(日)、あなたの知らない夜です。

 

 

今日は少し痛い話なので、苦手な方は読まぬよう最初にそれを断っておく。

 

 

3時、というものは昼であれ夜であれお腹がすくもので、

こと夜中の3時となると頭に浮かんだカップ麺やら何やらを食べないとどうにかなってしまうのではないか、

というような半ば脅迫じみた観念におそわれ、コンビニへ何かに取り憑かれたような顔をして向かうことになる。

 

 

最近のまるで山のような変わりやすい天気の下では、たかだか数分の距離の往復の間に

雨がサァーっと降ってきたりもするものだから、コンビニ袋を手に持ってフラフラフラ、

と家に戻るまでに一丁前に濡れたりなんかしてなんとも言われぬ気持ちになったりする。

 

 

 

そもそも夜中の3時に何かを食べるというのは、3時以降も起きているという前提がある。

そのまま寝たら豚になってしまうし、寝るために食うという哲学は私にはない。

基本的には朝まで仕事をしてしまおう、という夜にこの行動に及ぶわけだ。

 

 

先日、まさにそんな夜があって私は夜中の3時にファミリーマートで焼うどんを買ってきた。

夜中の3時というのはナイトクラブにいなくてもテンションが上がっているものだ。

これは一種の諦めに起因する感覚であって、終電を逃した際に「仕方がない、今日はとことん楽しむか」

とスイッチを切り替えるあの時と少し似ている。

そしてテンションが上がっているというのは興奮しているということでもあり、

更に言うと注意散漫で危険な状態でもある。

 

 

私はその夜、焼きうどんの容器を前に割り箸を口にくわえて意気揚々。

蓋を開けると醤油と鰹節の香りが鼻から脳に突き抜けていく。

コカインとはおそらくこんな感じなのだろう。

ここで私の注意力はまた一気に下がり、狭い部屋を小躍りする始末。

 

 

冷蔵庫からタバスコ系のソースを取り出し全体に満遍なくかけ、

焼うどんが真っ赤に染まり事件性を帯びてきたところで事件は起きた。

テーブルに座った瞬間、勢い余って私がビーバーのように口に縦にくわえていた割り箸が上あごに突き刺さった。

 

 

おご、となった瞬間口の中がひんやりと冷たくなり、言うまでもない何かが溢れてきた。

舌で恐る恐る上あごをなでると「現場」が確認できる。

こうなったらもう焼うどんどころではない。

キッチンまで走り「ぺっ」とするとシンクは真っ赤に染まった。

映画で見る結核の文豪のようである。

しばらくシンクを赤く染めつつ、でもさすがは口内、治癒が早い。

個人的にはヤクルト一本分くらい出血した感じがあったがおそらくそんなに出ていない。

数分経つと血は止まり、痛みもなくなった。もちろん食欲も。

 

 

テーブルには焼うどんだけが残った。

なんだかもはや食べ物とさえ思えず、蓋をして冷蔵庫に入れた。

そうしてベッドに横になって天井をしばらく眺めていたら、

なんだか笑いが込み上げてきて夜中にも関わらず声を出して笑ってしまった。

そうして布団もかけずにそのまま寝てしまった。

 

 

私は夜中の3時と付き合いが長いが

この事件で初めてコミュニケーションが取れたような気がしている。

3時は私に早く寝ろ、或いは焼うどんは一晩寝かせろと伝えたかったのだろう。

 

 

 

おやすみ日本

 

 

 

 

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