今日も非常に暖かかった。12月の概念が覆されていく。
昨夜は飲み屋でたまたま友人に会い、ワインを一本頼んで3人で飲んだ。
ホブノブというトロピカルな甘い香りの白ワイン。
時間が遅かったので入店してすぐにラストオーダー。
夜ご飯を食べていなかったこともあり、空きっ腹への白ワインは陽気になるのに容易だった。
サンタクロースは存在するのかという話になり、存在するで合意した。
朝6時。ベッドの上で布団もかけずに服のままの状態で目が覚めた。
気温もあってか寒気のひとつも起きず、歯を磨き顔を洗い、
今度はちゃんと布団に潜ってもう一眠りすることに。
二度寝の心地よさは神様からのプレゼントだろう。
仕事上、平日はほとんど椅子に座っているので万年運動不足の私。
土日くらいはアクティブに。がスローガンである。
日中の気温は20度。半袖でじゅうぶん戦える。
隣駅まで歩き、味噌ラーメン屋に入った。
おそらく今年初めてラーメン屋でライスも頼んだ。
味噌ラーメンと小ライス。悪魔のような美味さで体が震えた。
この12月の半ばにTシャツ一枚で出歩いて外気で震えずラーメンで震えるとは。
お店を出るとまた家までウォーキング。
高台から線路越しに美しい紅葉が見える。ウォーキングレッド。
写真を何枚か撮ったので、それをこれから絵に描き起こして今日は寝ることにする。
おやすみ日本
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夏の終わりにヘッドフォンを買ったのだが、
それ以来ヘッドフォン中毒になってしまった。
仕事中はもとより外出の時も大体ヘッドフォンをつけている。
別に音楽を聴いていようがいまいが関係なく、私の頭に終始抱きついている。
軽めのヘッドフォンなのでたまにつけているのを忘れることもある。
メガネをしながらメガネを探すような事態がヘッドフォンでも起こるのだ。
オープンなんちゃらという仕様なので音量を上げれば普通に音漏れがする。
そもそも外で使うようには作られていないのだろう。
なので電車の中では音を小さくしぼるのだが、やかましい時間帯にはもはや気のせいくらいにしか聴こえない。
ではなぜ外にまでしていくのかというと、冬には耳当てのような役割も果たしてくれて暖かいのだ。
先日暖冬だなんて書いたばかりだが、それでも冬に変わりはないわけで。この音のする耳当ては重宝するわけだ。
夜眠る時にもヘッドフォンをつけている。
私にとってのヘッドフォンはもはやイギリス人のナイトキャップ的な位置付けにある。
ここまでヘッドフォンヘッドフォンと書いてきたが、本当にヘッドフォンはヘッドフォンなんだろうか。
ヘッドホンのような気がしてきた。調べてからベッドインすることにする。
おやすみ日本
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12月にしてはおそろしく暖かい。
おかげで部屋では暖房もつけず、外に行く時も秋用の薄手のロングコートで間に合っている。
なんならコートすらいらないのだが、とりあえず冬だしまあ羽織っておこう、くらいの感覚だ。
靴は昨年の夏に買ったビルケンのサンダルを、それから季節を問わずほぼ毎日履いている。
だが最近左のサンダルにだけ少し異変が起きている。
小さい子供の靴で歩く度にプニャッ、プニャッと音のする可愛らしいものがあるが、
あれとまったく同じ音がするのだ。裏を見ても特段変わりはないのだが、歩くとプニャッと音がする。
38歳の男が履くものから出る音にしては可愛いよりか怖いが勝るだろう。
先日夜中に仕事を終えると、どうしても一杯外で飲みたくなった。
午前12時を過ぎていたが私の行きつけは2時まで開いている。あそこに行こう。
コートを羽織って自宅を出ると、暗い夜道をプニャプニャと音を立てて歩き出した。
夜空にはオリオン座が輝いており、そういえば駅前の沖縄料理屋もまだやっているかもしれない、
なんて思いながらも最初に決めた行きつけへと向かった。
扉を開けると先客が2人。
彼らはスーツを着ているからサラリーマンだとすぐにわかる。
私は彼らから見たらどのように映るのだろう。
黒いロングコート。金髪と黒髪と白髪の混じった長髪。髭。妙に大きなヘッドフォン。プニャッと音のする靴。
とにかくマスター、ビールを一杯。
午前一時を回った頃、背後の扉が開いた。
ほら、いたじゃん!私の背中に声がかかる。
友人達だった。噂をしていたらしい。
午前2時を回りお店を出た。サンダルも眠いのか音を立てない。
途中のコンビニでエンジニアの友人がみんなに缶ビールを奢ってくれた。
夜はこれからである。
何を話したかほとんど覚えていないけれど
さすがに寒かったことは覚えている。
最後は私がみんなにほうじ茶を買って、
それぞれの家へと帰っていった。
空はもうぼんやりと明るかった。
おやすみ日本
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気持ちを揺るがすものであって
かつ気持ちを穏やかにするものであって
少し先の角を曲がればあるものであって
いざ曲がればもう去っているものであって
隆起した性器のように瞬時のものであって
大木のように永遠なものでもあって
どうしたんです?
私が尋ねると
いいえ、ただただここで揺れているだけです
彼はそう言いました
彼女だったのかもしれません
その彼だか彼女だか見当のつかぬものが言うのです
行ったり来たりするなだらかな曲線を描くものに乗って
私は秋が近いと思った時に
石を投げればその秋、というものに当たるのではないかと思ったのです
それくらい近くにいるものだと
しかし
私は手を伸ばせば秋に触れる、という感性よりも
半ば暴力的な感性を持っているのではないかという一抹の不安を感じ
それを振り子の慣性でもって振り落とそうとしているのだと
でも秋には実体がないのです
私が石を投げようが
手を伸ばそうが
それには当たる、触れることができないから
私は自分がどういう性質のものなのか
わからない、と
いい返答が思いつきませんでした
見当もつきませんでした
それで私は
私たちは
静かに冬を待つことにしました
冬が訪れた時、または冬が近づいた時に
あなたがわかるかもしれない
秋に対して起こしたことを
あなたが覆すようであれば
あなたが秋だったのだと気がつけるかもしれない
うつり気で
自分勝手で
白々しい
彼、あるいは彼女は泣き出しました
私はいずれにせよ馬鹿馬鹿しいと
そこに物知り顔のちんけなサルがやってきて
こんこんと泣くその人に言うのです
君は秋ではなく雨季であると
彼、あるいは彼女はムキになって
そのちんけなサルを追いかけましたが
少し先の角を曲がったところで
まあすっかりと見失いました
おやすみ日本
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昨日家の近くのベーグル屋に行ってきた。
近くとはいえこの暑さである。
私が仮にソフトクリームだったら
ベーグル屋に着く頃にはコーンだけになってしまう。
歩くよりかはマシなので自転車に跨る。
違和感がある。
前輪がパンクしている。
さて困った。行く気が失せるじゃないか。
ベーグル屋が西なら自転車屋は東にあるんだ。
これは啓示なのか。汝ベーグルを食べるべからず。
とにかくまずは自転車を押して東へ向かう。
蝉の声が通りに降りそそぐ。
この異常な暑さを蝉はどう思っているんだろう。
ニュースでは人間にばかりインタビューをしている。
たまには蝉やらカブトムシに聞いてみてほしい。
なかには流暢に話すのもいるだろう。
ははぁ。これは横が切れちゃってますね。
結局タイヤをまるごと交換することになった。
5年振りのニュータイヤ。
5千円払って今度は西へ。
ハム玉
照り焼きチキン
白身魚のハニーマスタード
ジンジャエール
10分かかるので、と店内へと案内される。
雑誌がいっぱい。
ポパイを手に取る。
車特集。ゴルフ2が載っている。
格好いいんだ。
買うなら多分この車。
ベーグルはとても腹持ちがよかった。
もっちもちだし腹持ちよし。
そうして夜も更けてからスーパーへ。
蝉ももう寝ぼけたやつが数匹鳴いているだけ。
今日もお疲れ様でした。
台湾ビールを2缶。
ポテトサラダ。
チョレギサラダ。
マグロのぶつ切り。
オクラ。
スマホが鳴る。
誰だ?
ベーグル屋を教えてくれた人だった。
おやすみ日本
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今日は何時に起きたか覚えていない。
ゆでたまご2つとアイスコーヒーを飲む。
昼はスーパーでビンチョウマグロのぶつ切りと浅漬けともずく酢とネギ購入。
ビントロ丼を作るのだ。
ちなみにビントロのビンはビンナガのビンでもある。
つまりビンチョウマグロとビンナガマグロは同じマグロである。
ビンビンうるせぇな。
昨日買った鉄火丼のタレとワサビを混ぜてをビンマグにかける。
オクラもどばっとかける。少しツンとしてうまい。ツンデレ丼。
たまに浅漬けのキュウリを口に放り込む。
むにゃむにゃした食感のビントロ丼にパリッとした食感が入ってうまい。
夜はまだ食べていない。
なに食べよう。
おやすみ日本
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7時45分起床。
水を飲む。ゆで卵ふたつ。
午前中は月刊誌の特集のラフと連載のラフを作成、クライアントに送る。
メールをいくつか確認、返信して昼になる。
昼はスーパーでまぐろのぶつ切りと鉄火丼のタレを買ってきた。
タレをブツにかけて5分待つ。オクラも解凍してごはんに乗せた。
昨日の昼に作ったすた丼(厳密にはすた丼にならなかった)より美味しかった。
午後はビジネス書のカット作成。ひたすら進める。
20時くらいに夜ご飯。
ちゃんこ鍋。だしをホットプレートに入れてキャベツ、豚バラ、豆腐、ネギ。
どこがちゃんこ鍋なんだ。
ここ1ヶ月くらいでだいぶ食生活が変わった。
例の七夕腸炎殺人事件がきっかけでなんとなく自炊中心にしたからだ。
加えてエビオス、ビオスリー、ビオフェルミンを食後3回、1日で45錠飲んでいる。
少しは腸内環境が良くなってきているだろうか。
腸内に悪玉菌が多いとハンバーガーやらラーメンやら脂っこいものが食べたくなるらしい。
逆に善玉菌が多いと納豆やら魚やら体が喜ぶものが食べたくなるらしい。
食べたいものは腸が決めていると言っても過言ではないそうだ。
たしかに週一回、多い時は三回くらいラーメン屋に行っていたのに
今月はまだ一回も食べていない。これも腸が欲していないということなんだろうか。
イーロンマスクのせいで仕様が変わったTwitterのようだ。
私は数年前に一度カンピロバクターにやられている。
私と同じものを食べた友人はなんともなかった。
もし今後腸が鳥刺しを欲したら、私は腸を信じていいのだろうか。
おやすみ日本
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今日は朝7時起床。
顔を洗う。歯を磨く。
レンジの上にあるカゴの中からバナナの房を取り出す。
一本ちぎる。皮を剥く。
私の友人でバナナが嫌いなのがいる。
「だって生ぬるいじゃないですか」
わかるような。わからないような。
午前中も午後もひたすらカット作成。
すたこら右手を動かす。
大体一つのデータで20ページ分くらいのカット。
大ラフを描き終えたら順不同にペンを入れていく。
車のタイヤだけ描いて隣の人間の腕だけ描いたり。
ずいぶん下のハサミだけ描いたり。あっちこっちから描き進める。
先週の土曜日に久しぶりにすた丼を食べた。
違法レベルでうまい。
今日も昼に無性に食べたくなったんだけれど、
なんとなく自分で作ってみようと思いスーパーで豚バラとネギとタレを買ってきた。
冷蔵庫にキャベツが余っていたからそれも使った。
結果、全然違うものが出来上がった。
もちろんキャベツのせいではない。
ジミーペイジは全ての弦が切れても私よりギターがうまい。
そういうレベルの話だ。
おやすみ日本
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昨夜ジブリの新作を友人と見てきた。
立川のシネマシティ。最終20時45分の回。
客の入りは6割くらい。
ジンジャエール片手に約2時間。
だいぶトリッキーな映画だった。
ジブリのフロントマン、
宮崎駿が描き鳴らすオルタナティブロック。
23時。立川の飲み屋に入る。
26時。タクシーで国分寺のスナックへ。
29時半。解散。
30時。友人からライン。
君たちはどう生きるかは
私たちの睡魔を殺したようだ。
おやすみ日本
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梅雨が明けました。
相変わらず筋トレが続いている。
ゆでたまご。玄米。納豆。りんごを食べる。
トマトジュース。麦茶。午後の紅茶。アイスコーヒー。水を飲む。
午後は雑誌の特集のラフ作成。
色塗りは明日に回す。
次いで連載のラフ作成。
17時半。友人からのラインを返す。
君たちはどう生きるかをこれから見てくる。
少し眠い。
仮眠を取ろうかしら。
いやだめだ、おそらく寝過ごしてしまう。
銭湯に行ってこよう。
風呂上がりに涼しい映画館。
これもあぶねえなぁ。
ええいままよ。
おやすみ日本
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昼にスーパーでにぼしを買った。
小腹が空いたら口に放り込む。
七夕腸炎事件以来、からだに良さそうなものに依存しつつある。
ただ、からだに良さそうなものがからだにいいとは限らない。
本当に体にいい食物は5種類しかないと何かで読んだことがある。
魚。茶色い炭水化物。大豆。オリーブオイル。ナッツ。
たしかこの5種類。
じゃあ煮干しは体にいいじゃねえか。
でも煮干しにはプリン体がとても多く含まれており、
食べすぎると痛風になるらしい。
食べすぎはなんでも良くない。
他にも色々調べ出すと色々な情報が見つかる。
ただ調べすぎも良くないような気もする。
おやすみ日本
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今日は少し涼しかった。
太陽が雲に隠れるだけでこんなにも違うものか。
とはいえエアコンをつけないとすぐに壁の向こうから熱気がやってくる。
つまり今日は涼しかったわけではない。
昨日よりも暑くなかっただけである。
関東は今週末におそらく梅雨が明けるそうだ。
これから更に暑くなるのだろう。
とはいえ都心でももう38度なんて気温を記録しているわけで。
夏のピークとしてはこれでもう十二分。
事実上の決勝はもう行われたのである。
かといってこれから急激に気温が下がったら下がったで
夏らしくないとか我々はきっと言い出す。
でもこの言葉がメディアで叩かれることはないだろう。
夏の正体を知りもしないから言えることでもある。
男らしくない。
女らしくない。
こんな言葉が消えつつある今
夏らしくないが消えることはない。
おやすみ日本
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ちょこちょこ本を読むのだが、
ちょこちょこ難しい言葉が出てくる。
その時その時調べるのだが、
本を閉じてすぐ、いや、ページを捲るともう私の頭の中から出ていく言葉がある。
形而上学。これだ。
これがとにかく出てきてとにかく出ていく。
邦画でいうところの光石研くらい出てくる。
そしてすぐに去っていく。
形而上学。それは感覚を超越したものを探求する学問。
神様とかが対象。
ネットで数分調べるとこんな感じ。
こうやって書き起こすとだいぶシンプルでわかりやすい。
だがこの言葉が私の頭の中に三日と留まったことはない。
ただこうして書き記すのは初めてのことなので、
今日から何か変わるかもしれない。
脳に一体いくつ部屋があるのかは知らないけれど
そのどこかのとても小さな部屋にようやく住み着く気配がある。
おやすみ日本
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引き続きとても暑い。夜も暑い。
これでもたしかまだ梅雨は明けていないはず。
梅雨は何をしているんだ。ゼルダの新作でもやっているんだろうか。
飲み屋で意気投合した相手がついうっかり自分が梅雨だということを白状したら
私は君を責めるだろうか?
やはりしっとりとした見た目なんだろうか。
どうなんだ梅雨。もう蝉が鳴いているぞ。
今日は昼に焼きそばを作り、夜も焼きそばを作った。
三袋入りだからまだ一つ残っている。
明日の昼もおそらく焼きそばを作るだろう。
梅雨明けまで焼きそばを食べ続けてみようかしら。
思いのほか梅雨明けが先に伸びたら
私は焼きそばを食べすぎて嫌いになる可能性もある。
そうして私と焼きそばが飲み屋で別れ話をしている最中に梅雨が入ってくる。
でも君は私たちの別れの理由なんて露知らず、美味そうに酒を飲むだけだ。
おやすみ日本
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今日も変わらず蒸し風呂のような暑さ。
日中は家でドローイング。
カレルの本を50ページほど読んだ。
夜は駅前のカウンター7席しかないイタリアンに行った。
エル字のカウンター。
私の席から午前10時の方向に座った紳士がそれはそれは飲む男で。
白ワインを4本と、なもなきワインを1本飲んだ。
私はこの店を先週の木曜日の午後17時に見つけたのだが、
ママにこのお店はいつからあるのか尋ねると2年前にはあったという。
突如私の人生に現れた飲み屋である。
この辺のうまい店の話になる。
私がどこそこの焼き鳥屋はおそらくここいらで群を抜いているというと
ママはたしかにあそこは美味いと頷いた。
一拍おいて、私は出禁だからもうあそこには行けないのよ、と言った。
おやすみ日本
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今日もとんでもない暑さだった。
家から一歩も出る気はなかったがお昼にスーパーに行った。
最近毎日スーパーに行っているから、
もはや行かないとなんとなく落ち着かない。
習慣とはおそろしいものだ。
サッポロ一番みそらーめんを食べた。
なんだか眠くなってベッドに横になる。
視線の先に本棚。
起き上がってカレルの本を手に取る。
昨夜少しカレルの話をしていたからこうして目に入ったのだろう。
随分前に読んだからお前おそらく勝手に脚色してるぞ。
もう一回読め、と本に言われているようだった。
ベッドに戻る。本を開く。
時折思う事がある。
文章にも糖質が含まれていると。
おやすみ日本
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ジブリの新作映画が始まった。
まわりでは「え?新作やるの?」なんて声もちらほら。
そりゃそうだ。ジブリは今回宣伝を何一つ打っていない。
つまりどんな映画なのかまったくわからない。
情報としてはなんだか鳥の被り物をした人間なのかわからないけれど
そのポスター一枚だけ。
14日から公開ということで
13日にちらっと近場の映画館の席予約表を見てみると
朝8時の回はほぼ満席だった。
宣伝をしない宣伝の成功といっていいのだろう。
宣伝をしていたらの世界線も見てみたいところだが。
なんにせよジブリに対する信用と期待が人の足を動かすわけだ。
私も糸井重里がマザー4を作ったらなんの情報がなくても買うように。
平日の昼間が狙い目なのかなと思いつつも
そろそろ夏休みが始まるので逆に混む可能性もある。
今世の中は三連休だから最終日の夜はどうだろうと調べてみると
まだ結構席に余裕があった。行くならこの日だ。
心に余裕があれば観に行きたい。
おやすみ日本
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今日は夜から打ち合わせで新宿に。
今帰りの中央線でこれを書いている。
電車が一瞬止まっている。
次は吉祥寺。
なんとなく降りたい。
今降りたらおそらく終電はない。
理性と本能、どちらに従うべきか。
席が空いたら降りる。
空かなければそのまま帰る。
そうやって一応の選択肢を作るものの
踏み出せないのが人である。
おやすみ日本
夕方。気分転換をしようと外に出てチャリンコを動かすと何かがおかしい。
いつもは鳴らない音がする。
見ると後ろの泥除けを止めるボルトが片方取れていた。
辺りを探すが見当たらない。牛丼でも食いに行ったのかもしれない。
仕方なく近くの自転車屋へと向かう。
「同じ部品はありませんが、似たような部品でなんとかしますよ」
リコーダーの代わりのちくわみたいなもんか。
ついでにリアブレーキの効きが弱くなっていたのでそれも直してもらった。
修理が済んだ自転車に乗って駅前のドンキホーテに行くと
店先の棚の前で男女三人組の若者があっと声を上げた。
どうやら欲しかった水鉄砲が売っていたらしい。
この夏一番好きな他人の日常の風景だったかもしれない。
帰りに牛丼屋を覗いたがボルトはいなかった。
おやすみ日本
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今日も随分と暑かった。
こうも暑いとすっきりと炭酸が飲みたくなる。
のどにからだにシュワシュワが欲しい。
今メロンソーダが流行っているらしい。
あれに流行りやスタリがあったのか。
メロンソーダといえば喫茶店。
新宿にタイムスという昔ながらの喫茶店があって
そこはいまだにバカスカと煙草が吸える。
煙につつまれながら飲むメロンソーダも乙なもんである。
同じく新宿にまちぶせという喫茶店がある。
ここは星屑スキャットのギャランティーク和恵さんの店らしい。
まだ行ったことがないのだが、
食べログの写真がほぼメロンクリームソーダなので少し気になっている。
近々行ってみようと思う。
おやすみ日本
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今日も暑かった。
こうも暑いとたいして好きでもないアイスコーヒーが飲みたくなる。
冬のココアみたいなもんだ。
エアコンは昼も夜も口を開けたままである。
そろそろ夢に出てきてアゴが痛ぇよと言われそうだ。
ベランダの室外機の上にアデニウムという植物を置いているのだが、
ここ4年で今年が一番花が咲いている。
元々が砂漠で生きるような多肉植物なので暑さに強い。
だから夏に咲くのは当たり前といえば当たり前なのだが、
去年は一輪も咲かなかった。
去年も夏はあったし去年の夏も暑かったのに。
一体去年と今年で何が違うのか。
なんとなく感じているのは
こまめに放っておくほうがうまくいってる気がする。
おやすみ日本
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今日は6時半に目が覚めた。
昨日まで大変だったお腹も凪のように静かになった。
奇跡の筋トレ連続10日目。
ゆで卵をふたつ食べる。
午前中は本日締め切りの仕上げ。納品。
昼はスーパーでキムチ鍋の素の瓶の隣にあった
「むーひ」という痒みに効きそうなキムチベースを購入。
白菜とネギと豚肉をホットプレートに入れむーひで味付け。
むーひはうーまだった。
午後はひたすらカットを描く。
18時。またもやむーひで豆腐でうーま。
20時から別案件のカットを描く。
21時終了。
これから銭湯に行こうと思うのだが、出窓の向こうがピカピカ光っている。
たしか先週の今日もすごいピカピカしていたはずだ。
だがゴロゴロと音が聞こえない。
これは果たして雷なのか。
あるいはピカチュウなのか。
確かめるためには出窓を開けるか外に出るかしかない。
逆に言えば出窓も開けず、外にも出なければ、
このピカピカがピカチュウである可能性は消えない。
ということは現時点でピカチュウは半分存在することになる。
これがいわゆるシュレーディンガーにおける猫であり
シュワルツェネッガーにおける知事であり
スタローンにおけるハムである。
おやすみ日本
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連日の食当たり騒動。
3日目経過報告。
朝5時に目が覚める。
まだ腹は痛い。下痢。
正露丸が不発に終わったようだ。
今日は整腸剤に切り替える。
次いで腹に良さそうなものを検索。
調子のいいうんこの色と形にたどり着く。
黄色みのあるバナナ状の形とある。
バナナじゃねえか。
昼。納豆ご飯。トマトジュース。
昨日の鶏団子スープのあまり野菜と餃子のスープ。
まだ腹は痛い。下痢。
19時。納豆ご飯。ポカリスエット。
20時。まだ腹は痛い。下痢。手強い。
20時半。体内のビオフェルミンから電報。
21時。回復の兆し。
21時半。これにて完治とする。
3日に及ぶ腸内戦争。
我が善玉菌よくやった。
休暇をやりたいところだが明日からも頼む。
おやすみ日本
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昨日に引き続きまだ食当たりが続いている。
こんなに持続可能では困るぞ。
頑張れ私の善玉菌。
昨夜。夜中の3時に目が覚めた時はまだ熱もあった。
なんとか眠りについて夜が明けた。
今朝の体温は36度6分。ほぼ平熱に戻った。
それでも腹はいてぇもんだからついに最終兵器、正露丸を飲むことに。
1時間後。
腹の痛みも治り、体温36度1分。平熱以下だ。正露丸とは何者だ?
だが下痢は治らず。
カニパンを食べる。リンゴジュースを飲む。
筋トレをする。
今日筋トレいるか?
日中はほぼベッドの上から動けず。
ネットフリックスでスパイのドキュメンタリーを流す。
もっと明るいの観ろ。
大家さんの誕生日だったのでメールを送る。
ありがとう、お酒を飲みすぎちゃだめよ。と返信がくる。
夕方。駅ビルの無印でホットプレートを購入。
18時。白菜、チンゲンサイ、鶏団子を入れてスープを作る。
21時。腹痛の再来。温かいスープの冷たい仕打ち。作るんじゃなかった。
本日2回目の正露丸。
現在22時過ぎ。
腹這いになってこれを書いている。
私はなぜここまでしてこれを書いているのだろうか。
私が知らなければ誰も知る由はない。
おやすみ日本
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深夜3時あたりからずっと腹と尻が唸っている。
微熱もある。
完全に食当たりだと思う。
だが食べ物のせいではない。
私の腹が弱過ぎるせいだ。
私は私の腹が弱い自覚がある。
なので食べ物に対する警戒心が非常に強い。
飲食店でメニュー表を開くとおそらくこれはあぶねぇなと思う品が光ってみえるほどだ。
それを避けて頼めばいい。
でもいつもいつでもうまくいくなんて保証はどこにもない。
それが今回だ。
不幸中の幸いか今日は打ち合わせが入っていなかった。
昨日は1時間程ズームで話していた。今日だったらやばかった。
ずっとナポレオンの肖像画のように腹に手を当てていたことだろう。
浅い呼吸で前後に体を揺らして変なやつだと思われたかもしれない。
途中トイレに立って長いこと帰ってこなかったかもしれない。
本当にあぶなかった。ありがとう神様。
今日は七夕ということで。
天気も悪くないようだから織姫と彦星も会えたのではなかろうか。
今更ながら速達の短冊で私の願いを叶えてほしいものだ。
最終兵器の正露丸が視線の先にある。
だがなるべくならすべて出し切ってしまいたいのでまだもう少し様子をみようと思う。
18時間くらい経っているわけだからそろそろ快方に向かってもいい。
頑張れ私の善玉菌。
人にはヒトの乳酸菌。
今日は呑めずに終わる花金。
おやすみ日本
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今日は夜に新大久保で用事があった。
向かう中央線車内。私の右隣ではカムパネルラが青白い顔をしてザイム真理教を読んでおり、
左隣に座る人は頭をカクンカクンとしていた。
この人は今とても眠いんだろう。
ということはとても疲れているんだろう。
けれどそれと同時にとても気持ちがいいんだろう。
体が一生懸命回復しようとしている。
いわば回復魔法。それがカクンカクン。
その人は私の目的地より前の駅で先に降りた。
私は頭の中でその人になった。
頭の中でだけ同じ駅で降りた。
と言うことはその人は頭の中でだけは私になる。
ものすごい気味の悪いことを言っているが、
改札を出て駅前を見渡すほんの数秒、
カクンカクン後の視界は普段より少しクリアになる。
あれが好きで、あれを体験しようとしたのだ。
でもそれは当たり前のようにうまくいかなかった。
おこぼれをもらおうと思う自分がおこがましい。
カクンカクンの心地よさはその人だけのものである。
おやすみ日本
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今日は14時から打ち合わせが一本入っていたので
昼飯は15時過ぎになった。
いやいやお昼に食べればいいじゃんと思うだろう。
なんとなく打ち合わせ前は食べたくないのだ。
いいから食べなさいよと高圧的なユマサーマンにビンタされたい。
15時を過ぎると普段行く定食屋はやっていないので
駅前の丸亀製麺に行ってきた。
木の香りが香りそうで香らないカウンターに座る。
隣ではベンシモンを履いた座敷童がライオンのおやつを読んでいた。
カレーうどんにイカ天、トリ天のトッピング。
うどんを一口も食べずにまず柔らかいイカ天を完食。
ついで香ばしいトリ天を完食。
もう少しバランス良く食べなさいよとソフィーマルソーにエルボーされたい。
ない傷をさすりながらジンジャエールを買って帰った。
おやすみ日本
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今朝起きると姉からLINEが来ていた。
実印を失くしたらしい。
たぬきがこけたと囁きながら探すといいよと返す。
すると5時間後にたぬきのおかげで見つかりましたと連絡がきた。
たぬきのおかげにするには少しかかりすぎのような気もする。
おやすみ日本
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今日も筋トレから始まった。奇跡の3日目。
日中は仕事をして、夜は髪を染めてきた。
人生初めてのブリーチで私の白髪は消え去った。
それから行きつけの飲み屋に行くと
隣で美容師の夫婦が飲んでいた。
あなたも美容師ですかと聞くので
なぜですかと返すと
手がそのようでしたのでと言う。
絵描きと美容師の手は似ているらしい。
奥さんはだいぶベロベロだった。
旦那さんはニコニコしていた。
二人でレモンサワーを15杯飲んで帰って行った。
おやすみ日本
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今日も昨日と同じ内容で筋トレをした。
おかげさまで筋肉痛がすごい。
4月に飲み仲間と玉川上水を端から端まで歩いたのだが、
あの時以来の筋肉痛だろう。
どうか夢の中にマッサージ屋がでてきますように。
そうして説明のつかない幸福が起きて明朝すっかり回復していたら
また同じ内容で筋トレしようと思う。
おやすみ日本
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今日はなんとなく筋トレから始まった。
腹筋100回。
爪先立ち100回。
スクワット100回。
腕立て伏せ100回。
急にやるもんだからそら辛い。
とくに腕立て伏せ100回はしんどかった。
全身がプルプルしてそのままプリンになるかと思ったくらいだ。
まさにプリン体である。
せっかくだから明日もやろうかなと思う気持ちもある。
だが気持ちだけではどうにもならない時もある。
おやすみ日本
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梅雨のお手本の様な天気。
生ぬるい湿気を含んだ風。
昼は漁師丼を食べた。
先週の金曜は神戸から来た友人と渋谷で飲んだ。
予約をしないで行ったものだから4軒ほど断られた。
ふと雑居ビルが目に入る。
ここしかねぇ。
上から順に扉を開けていくと
3階にあったロックバーに入れた。
ボーリングのピンぐらいでかいグラスビールを頼んで乾杯。
友人は仕事を辞めたそうだ。
これから3ヶ月間ニート。世界を回るらしい。
来週からと言っていたから、
今頃おそらくインドにいる。
私はこれから下北沢。
帰りはおそらく深夜になる。
おやすみ日本
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6月29日(木)、コンクリートの煮付けの夜です。
今日の東京は34度まで気温が上がった。
ここまでくると生きているだけで暑い。
昼は冷たいものがいいなと、駅近くの蕎麦屋に向かった。
いつも混んでいる人気の蕎麦屋。
お昼時だが運良くすんなりと入れた。
カウンターへ案内される。
隣ではベンシモンを履いた座敷童が利己的な遺伝子を読んでいた。
もりそば700円を注文。ギャル曽根が喜ぶ量である。
間違って大盛りなんか頼んだら放課後まで居残りだ。
つゆにネギ、わさび、大根おろしを入れて勢いよくすする。
うん、今日は蕎麦で間違いない。
汗がスーッと引いていくようだ。
帰り道。ふたつ角を曲がるとさっき別れた汗が戻ってきた。
冷たい缶コーヒーを買って帰った。
おやすみ日本
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銭湯生活も半年が過ぎた。
飯もうまいしなんとなく健康になった気がする。
銭湯は7月から20円値上げするようだ。
ドライヤー代が20円だから、7月からは540円ポケットに入れていかなくてはいけない。
540円というと私が一時期吸っていたタバコのウィンストンが買える。
私は喫煙者である。だが今年はまだタバコを吸っていない。
今年はそのまま吸わずにいきたいところなのだが、最近無性に吸いたくなる。
そんなわけで540円ポケットに入れるのは少し危険な気がしている。
入浴券を初めて買ってみようかしら。
10枚4700円。
この金額でウィンストンのカートンは買えない。
安心安全の入浴券。
ところで冒頭のなんとなく健康になった気がする、という点。
これ銭湯じゃなくてタバコを吸ってないからかもしれない。
おやすみ日本
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今日は15時から打ち合せがあった。
リモートの打ち合せ。
コロナ禍以来、対面の打合せはまだ2回しかない。
これからも打ち合せのメインはきっとリモートのままだ。
コロナ禍前は打ち合せ終わりにその地域にあるラーメン屋に行ったり、
喫茶店で原稿を読んだりしていた。
喫茶店と原稿読みというのはラブホテルとセックスくらい必然的である。
職業柄ほとんど家から出ないので、打ち合せで他の町に行くのは気分転換にもなっていた。
今ではズームの退出ボタンを押せばそこで打合せは終わる。
それでもなんとなく打ち合せ終わりは外に出たくなるもので。
というわけで駅前までふらりと行って、
マクドナルドでベーコンレタスバーガーセットを買ってきた。
あれを食べたのが16時くらいで今が21時半過ぎ。
さて夕飯はどうしたものか。
たいして腹が減っていなくても
このまま寝てたまるかと思うのが人である。
おやすみ日本
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スーパーマリオRPGのリメイク版がどうやら今年中に発売されるらしい。
当時やり込んだこのゲームのニュースにそわそわとしている。
長年眠っていたゲーム熱というものの種火がついたらしい。
うちにはテレビもSwitchもないから、まずはテレビとSwitchを買わないといけない。
実家にはアンティキテラ並みに眠っているエックスボックスがあるはずだが、
このマシンの中ではスーパーマリオは動けない。
なんでも一つのゲーム機で出来たらいいのに。
先週システムエンジニアの友人と焼き鳥屋で飲んでいた時。
どうしてプレイステーションのソフトがセガサターンでは出来ないのか、
というような私のクソみたいな質問に対して彼は懇切丁寧に教えてくれた。
しかし酒を飲みすぎて何一つ覚えていない。
どう帰ったのかもわからない。
それでもちゃんと家には帰れているのだから、
どこかで誰かがコントローラーを握っていると言えなくもない。
しかしあんなに丁寧に教えてくれたのに申し訳ない。
次会ったらギーグの倒し方を教えてあげよう。
彼が知らないはずがないのだが。
おやすみ日本
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今からくるまやラーメンに行こうと思っている。
朝から決めていたことだ。
洗顔後、鏡の前で頬を叩いて決めたことだ。
明日締め切りの仕事が数件あったものだから、
それを必ずくるまやラーメンの営業時間中に終わらせる。
そして心置きなくネギ味噌なんちゃらを食べに行こう。
これが今日立ち上げた目標だったのだ。
現在午後20時手前。今日やるべき仕事は済んだ。
最寄りのくるまやラーメンは22時閉店。
ここから自転車でおそらく30分。
つまり、これから一階に降りて私の自転車がイーサンハントに盗まれていない限り、
私はお望み通りくるまやラーメンにありつける。
ところが今こうして私はとても久しぶりにこのブログを書いている。
久しぶりに書くのだから「今ロスにいます。みんな愛してるよ」みたいな寒いことも書きたかった。
それがくるまやラーメンだ。別にくるまやラーメンを揶揄しているわけではない。愛しているよ。
今朝ゆで卵を2つ食べたきり何も食べていない。
それだってやはり夜に必ずくるまやラーメンに行けると信じて仕事を頑張ったからではないか。
限界までお腹を空かせてネギ味噌なんちゃらを食べるためじゃないか。
なのにいざ行けるとなったらこうだ。
もうなんの遠慮もいらないはずじゃないか。
一体どうしちまったんだ。
しかしひとつだけ思い当たる節がある。
今日は日曜日。現在午後20時手前。
サザエさん症候群かもしれない。
おやすみ日本
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私はラーメンが好きだ。昼は大体ラーメンと言っても過言ではない。
それでこの辺でうまいラーメンはどこだそこだここだなんて最近飲み屋で話していたのだが、
とある居酒屋のラーメンがまぁ下手なラーメン屋よりよほど美味い、
と一人が言い出し、あぁーあそこはたしかに美味い、と二人目が続いたものだから、
これはじゃあ行ってみるかとなって今週さっそくランチタイムに行ってきた。
お店はカウンターが4席にテーブル席が5席ほどの小さな佇まい。
カウンターではベンシモンを履いた座敷童がカンク・オン・アースを観ていた。
海鮮系の居酒屋らしく、お勧めは3点盛りだったり、漁師丼だったり、コショウダイの煮付けだったり。
私は今週3回そのお店に行ったのだが、3点盛り、漁師丼、コショウダイの煮付けの順に食べた。
ラーメンがうまい、という触れ込みだったにも関わらず。
玄関を出るまではラーメンを食べようとしていて、
歩いてお店に向かう道すがらもまだラーメン、
お店の入り口の引き戸を開ける時もまだラーメン、
いらっしゃいませこちらの席へどうぞ、この時点でもまだラーメン。
ところが数分後に目の前にあるのは毎回ラーメンではない。
大好きなラーメンを凌ぐ定食を、私はほんの少しの罪悪感と共に頬張っている。
おやすみ日本
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今日で2月がおわる。
にわかには信じられないが、たしかに終わる。
2月が始まった頃、今年の2月こそ永遠に続くものだと信じていた。
私の周りも、あぁ今年はきっと大丈夫だ、とワイン片手に笑顔を見せていた。
しかし、やはり2月は終わってしまう。
去年と同じように。一昨年と同じように。その前の年、さらにその前の年、
100年前の2月と同じように。
そんなものだから、今日は午前中に大家さんから電話がかかってきた。
「2月も終わることだし、ピザを取ったからね」
「本当に終わるみたいですね。30分後に伺います」
この辺では2月が終わることが確定するとピザを食べる風習がある。
道路にピザ屋のバイクだけのレーンがあるのもこの地域限定のことだろう。
私は大家さんの家に行き、仏壇に手を合わせ、パルスオキシメーターに指を入れ、
バヤリースを体に入れ、取り分けてくれたピザとポテトとチキンをいただいた。
帰り際、私の首に大家さんはマフラーを巻いた。
「あなた、全然寒がらないのよね。でもそのマフラー、よくお似合いよ」
「ありがとうございます、それではまた」
私は走り出した。家までの道すがら、
2月が終わることを受け止められない初老の男性が路上にひっくり返って泣いていた。
「一体何がいけなかったんだ!」
そう叫ぶ彼の隣には右手に文旦を持った華奢な若い女性がいた。
「何も悪くないわよ。良くもない。良くも悪くもないから2月は去っていくの。これは2月に限ったことではないわ」
文旦は彼女の顔より遥かに大きく、3月の香りがした。
おやすみ日本
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今月も変わらず銭湯生活を続けている。
いわば湯治のような目的で始めたわけだが、今月早々コロナになった。
まあだからといってじゃあ銭湯はもうやめだ!とはならない。
大体が新しいことを始めると必ず邪魔が入る。
それがコロナの感染だったわけだ。
時にはそれが邪魔には思えないものだから、私の場合はわかりやすくてよかったのかもしれない。
とにかくその後も湯治を続け、よりぐっすり眠れるようになったような、なっていないような。
体が軽くなったような、なっていないような。とにかく悪くはなっていないのだから、
この銭湯は肌にも生活にも合っている。
それにしても当初は熱くて苦手だった46度の湯船も、
2ヶ月も通えばクセになってくる。
第一印象はなんとやら。
しかし脱衣所の壁にこれみよがしに貼られた
「お風呂の正しい入り方」というポスターには、
湯船の推奨温度は42度と書いてある。
たまには不正解が正解な時もある。
おやすみ日本
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先日、姉に立川に呼び出された。
この春から姪っ子が中学校に上がるのだが、その連帯保証人になってくれというのだ。
午前11時過ぎ、JR中央線立川駅改札口を出てヘッドフォンで音楽を聴いていると、
ベージュのベレー帽を被った見慣れた顔が小走りでやってきた。
近くのカフェでお茶でもしようとなったが、
目星を付けていた店は外まで並んでいた。
姉はどういうわけだかその店名を見て
さすが立川ともなると改札の前にデリヘルがあるのね、と感心していた。
並んでいるマダムたちに殺される前に私は姉を連れ、
伊勢丹側に踵を返し、クリムトというカフェに入った。
クリムトはエアコンがとても効いていて上着もその下に来ているカーディガンもいらなかった。
客は数人で少なく、カウンターではベンシモンを履いた座敷童がチェーホフの六号病棟を読んでいた。
私と姉はコーヒーとサンドイッチを頼み、窓側の丸いテーブルに腰を掛け、
まずお互いの体調を聞き合った。私も姉もコロナ明けだったのだ。
姉は40度の熱が三日つづき、味覚障害に嗅覚障害と散々だった。
特に味覚障害は堪えたらしく、食事の楽しみを奪われ、これが一生続くのかと泣いたらしい。
結局、匂いの強いアロマを吸うなどしてショック療法を続け、徐々に感覚は戻ったという。
私は熱は出なかったが喉が腫れに腫れ、
私の喉を覗いた医者にこれは痛いだろうと3回言われ、痛いですと3回返した。
トラネキサム酸、ロキソニン、カルボシステインを数日飲んでよくなった。
最近姉は渋谷で働き始めたらしい。
事務職のようだが、履歴書も書かず、面接もろくになく受かり、
いつ行ってもいいし、いつ帰ってもいいらしい。
そんな職場があるのかといいたいところだが、
姉は私と違って意味のない嘘はつかないので本当なのだろう。
なんだかんだで小一時間話した後、
私は書類に名前を書き、叔父と書き、ハンコを押した。
姪っ子はまだ渋谷に興味がないという。
だがこの書類を提出する学校に慣れた頃には、
道玄坂をクレープ片手に走り回っているかもしれない。
おやすみ日本
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あっという間に1月が終わろうとしている。
年末年始に少し体調を壊した。
その回復にというわけではないが、年明けから銭湯に通い始めた。
約1ヶ月が経った今、生活の中に銭湯が定着したように思う。
コンビニで20円のお釣りを貰えば、
これは今夜のドライヤー代だなと思うようになった。
時間はまちまち、その日の仕事のキリがいいタイミングで向かう。
早い時には18時に、遅い時は22時過ぎに。
33の洗い場と三種類の風呂がある。
どの風呂もかなり熱めで数分も入れば皆タコのよう。
客は大体4〜5人と少なく、時間によっては貸切風呂だ。
サウナもあるが稼働はしていない。
扉を開けると妙に雰囲気があってサイレントヒルを彷彿とさせる。
22時半になると脱衣所の天井からぶら下がるアンティーク調といったら聞こえはいいが、
古びた照明が灯り出し、逆に洗い場の照明が半分ほど消えて少しムーディーな雰囲気になる。
高い天井を見上げると壁がボロボロで今にも崩れそうだが、これも味といえば味であって、
1ヶ月も通えば愛しくなる。
隣には喫茶店があって、22時までやっているので早く行けた日にはたまに寄る。
カウンターにはベンシモンを履いた座敷童がいて、
大体アイスコーヒーを飲みながらラヴクラフト全集を読んでいる。
ここのナポリタンはおそらく出来立ての小籠包より熱い。
帰り道、北風が吹こうがなんのことはない。
なんとなく寝つきも良くなった気がする。
というわけで2月も継続しようと思う。
おやすみ日本
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年末は胃腸炎、年始は扁桃炎と、いささか熱い年末年始だった。
まあそんなことはどうでもよい。
先日先輩から「ちょっと聞いておくれよ、うちの洗濯機が爆発したのよ」とやや興奮気味に連絡が入った。
先輩の家は外に洗濯機を置いているのだが、スイッチを入れてネギだのお豆腐だのを買いに行って、
帰ってくるとまさにその時目の前で吹っ飛んだのだそうだ。
先輩はその瞬間、すべてがスローモーションに切り替わり、
その数秒間においてはたしかに世界はその放物線を描く洗濯機のために存在しているのだ、と確信したそうだ。
人の話は半分聞けなんて言葉があるがどうも半分も信じられない話であって、
私はとにかく無事で何よりです、で済ましたのだが、
その数日後、私の家の洗濯機もまさかの同じような事態に。
内部は見えないから推測になるが、
水を吸った厚手のパーカーやら何やらが脱水が始まった途端に一筆書きで星を描くように洗濯槽に叩きつけられ、
そのエネルギーを間に受けた洗濯機がものすごい音を立てて弾み出したのだろう。ようは容量オーバーだったわけだ。
今年新しい洗濯機に買い替え、夏場は洗濯物が軽いので気が付かなかった。
幸い家にいたのですぐに対処できたが、ほんとうに爆発したかのような音と振動であったから
私もネギだのお豆腐を買いに行っていたら別の結末があったはずだ。
何かのはずみで持ってキッチンを通過し部屋のほうに洗濯機が吹っ飛んでいたとしたら、
私は先輩の前に警察に連絡していたかもしれない。
おやすみ日本
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昨日初めてコメダ珈琲のシロノワールというデニッシュの上にアイスクリーム、脇にチェリーという
なんとも可愛らしいデザートを食べた。
茶色い円形の土台に白くふわふわとした円錐、そして遠慮がちに、しかし確実に主張し得る赤い小さな球体。
「どうですか、この私の洗練されたボディは」と、言わんばかりである。
そんな私の気持ちを察してか、勘のいいチェリーが私に話しかけてきた。
私はギョッとして周りを見遣った。
となりの席ではベンシモンを履いた座敷童がレイブラッドベリの華氏451度を読んでいた。
モンターグさながら本に夢中で私のテーブルに置かれた赤い球体の声に気づくそぶりはない。
店員が前を通ったので呼び止めてチェリーのことを話すと、
「たまにあるんですよね、取り替えますか?」というので、いや、このままでいいですと返した。
店員が去ると「じゃあ何のために呼び止めたのさ?」と少し不満そうにチェリー。
私は少し困惑してチェリーをしばし眺めた。
困惑しうるファクターがこの1分の間に2回起きたのだから。
まずこのチェリー、そして動じない店員。
「さっきの店員さんがたまにあると言ったけれど、そのすべてが君なのかい?」
チェリーはいつの間にか私の向かいに肘をついて座っている。
「このチェリーは毎回同じチェリーかもしれない。ただチェリー役は違うでしょうね。
それはあなた側で考えれば、あなたは客であるけれども、毎回客役があなたではないのと同じよ」
おやすみ日本
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先日、「わたし焼肉食べたいなぁ」という大家さんの一言から
近くに住む空間デザイナーさんも誘って3人でランチに行ってきた。
お店は私が任されたのだが、ここなら誰を連れて行っても大丈夫だろうという最初に決めたお店が
ランチの営業をしておらず、行きつけの飲み屋でどこかいいとこありませんかねぇ、なんて聞き込みをした。
あそこは若者ばかりで騒がしい、あそこは全席喫煙だ、あそこはティラノサウルスの肉を使っている。
結局食事会前日にプテラノドンの肉を使っているお店に無事予約を済ませ、
家の前にタクシーを呼んで予約時間の11時45分ぴったりにお店についた。
ランチ御膳を3つ、牛タン、海鮮の盛り合わせを別で頼んだ。
空間デザイナーさんは30年前、パリにいる作家に会うために世界の歩き方を片手に単独でフランスに向かったという。
フランス語なんて話せないし、とにかく貯めた100万円と気合いだけで向かったという。
たまたま行きの飛行機で隣に座った女性がフランスに詳しく、
シャルル・ド・ゴール空港からパリまで一緒に向かい、宿の手配までしてくれたそうだ。
数日後、モンマルトルのカフェでデザイナーさんは無事作家に会えたそうだが
二人がコーヒーを飲んでいるその横を先日の女性がたまたま通りかかり、
デザイナーさんに気づいて「なんだー、友達いるんじゃん」と笑顔で手を振って去って行ったそうだ。
なんとも素敵な話を聞いたなぁと手を振る女性の後ろ姿を想像していると、食後のアイスキャンディーが届いた。
食べ終わると木の棒に「あたり」と書いてある。
景品はジュラシックパークのチケットだった。
何かいいことあるかもね、と大家さんに言われた矢先、
帰りのタクシーの中で新しい仕事が一本入った。
おやすみ日本
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朝起きるとポーズマニアックスというサイトを開いて仕事の前にデッサンを取る。
毎日違うポーズが更新されていてとても面白いし、習慣になる。
難しいポーズをしていたり、簡単なポーズの時もある。
マウスでいろんな角度に調整できて、モデルは筋肉の見える素裸の人体なので
へぇ、首ってこの角度から見るとこんなに長く見えるのねぇとか、発見も色々ある。
自分の好きな顔と髪型にして、大体数分でデッサンを取る。
お笑い芸人のダイアンのラジオをよく聴くのだけれど、
ボケのユースケのトークが乗ってくる状態をツッコミの津田が
ユースケの口エンジンが温まってきた、なんてこの間話していて面白い表現だなぁと思った。
私にとっての右手のエンジンの点火装置はポーズマニアックスのデッサンかもしれない。
おやすみ日本
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たまに難しい本を読む。
難しいので到底理解できす、イライラしながら読む。
熱くて苦いコーヒーを飲みながら、苦虫を噛み潰したような顔で読む。
難しいのでとても頭を使う。
使っているのに本当にほとんど理解できず、
しまいには自分の理解力のなさに腹が立ってくる。
そのうちこの本を理解できないのは実は私だけで、
他の人に読ませたらすらすら読めるんじゃないかと思って不安になってくる。
それでも頑張って読み進める。
窓からぶん投げてやろうという気持ちを抑えて。
そうすると休憩所みたいな箇所を見つける。
おぉ、なんかここはわかる、みたいな。
ただこれに関しても私の解釈はきっと間違っているんだろうな、という諦めもある。
でもそれはセミの声や犬の声のようなもので、私にはギーとウォンに聞こえるのだからそれでいいのだと持ち直す。
私は難しい本は好きではない。
けれど世の中にはこんなに難しいことを考えていて、またこんなに難しいものを理解できる人がいることに
不安になったり安心したりすることは好きなのだろう。
本には鍵もなければ入館証も必要ない。
ただそこにそっと入り、まんざらでもない苦痛を感じることはある種の贅沢かもしれない。
おやすみ日本
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なんだか眠れないのでもうひと記事書こうと思いついてベッドから出た。
そうしてパソコンを開いた瞬間にあくびが出るのだからなんとも言えない気持ちになる。
ベッドから出た私とあくびをした私、ほんとうに同一人物なのだろうか。
へー、アンタ双子座なんだ。二重人格じゃん。
と、ギャルに言われたことがある。
君の言う通りかもしれない。
先日行きつけの飲み屋に行くと、カウンターの一番奥に占い師が出張で来ていた。
占い師はメガネをかけた若い女性だった。
千円で前世とオーラを見てくれると言うので見てもらうことに。
まず自分の名前を3回声に出して言う。
すると占い師が目を細めて私の周りを見始めた。
私のオーラはグラデーションのサーモンピンクだそうで、
調和を意味するらしい。
あなたはバランスやくざです、との事。
語呂がいいけど自己紹介では使いづらい。
前世は人間ではなく妖精だったそうだ。
思いついたことを片っ端からやってください、との事。
いま夜中の2時だが、部屋が寒いしカップラーメンでも食べようかなと思いついている。
パソコンを閉じ、玄関に向かうまでに双子座が発動するか見ものである。
おやすみ日本
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ここ一週間ほど、昼は毎日駅前にある蕎麦屋のもりそばを食べている。
トッピングは頼まず、ただそばを食べて残ったつゆに蕎麦湯を入れて飲んでおしまい。
食べ終わったらどこにも寄らず、自転車に乗って真っ直ぐ帰ってくる。
出来のいいチンパンジーに教え込んだら完遂できそうな、
なんともあっけない昼のルーチンだ。
ちなみにそばに入っているのはルチンといって体にいいらしい。
大体駅まで自転車で5分だから往復で10分。
注文から食べ終わるのに約5分。
私にとってはこれが富士スピードウェイである。
おやすみ日本
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風呂上がりホカホカでこの記事を書いている。
体をさっぱりと洗い上げ、歯磨きも済ませた。
1日が、もとい今週が終わろうとしている。
今週も色々あったような、何もなかったような、
楽しかったような、楽しくなかったような、
そんな感情と現状と幻想のシーソーを行ったり来たりさせる間も無く、
あとはベッドに入って目を瞑るだけでいいのだ。
そうすれば数時間後には土曜日の朝日が出窓から差し込み、
土曜日の風がベランダから入り込み、
私はその光と風でもっていい夢か悪い夢から覚める。
ベッドから出てなんとなくホームセンターで買った980円のルームシューズを履き、
冷蔵庫をあけてダノンヨーグルトに手を伸ばし、口の中を少しひんやりとさせてから土曜日を始めるのだ。
ここまで決まっているのならば早いことベッドに入ればいいのだが、
私はこうして記事を書いている。
なぜかというとこの記事を書き終わる頃には、冷凍庫にチョコアイスが入っていたことを
もう一度すっかりすんなり忘れてベッドに行けるもんだと思ったのだけれど、
どうやらそれが難しいようだ。
この記事ももう第四コーナー、最後のストレートに入った。
もう抗うことはできまい。
私はこの記事の投稿ボタンをクリックしたら、
ベッドではなく冷蔵庫に向かい、冷凍庫からチョコアイスを取り出してしまう。
冷たくて甘いものに抗える者などいないのだから。
金曜日というものはそう簡単には終わらない。
おやすみ日本
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冷蔵庫には必ず紙パックのトマトジュースが入っている。
アマゾンで箱買いし、残りが2、3になるとまた頼む。
一段は必ずトマトジュースが占有する空間になっている。
今朝も冷蔵庫を開けてトマトジュースを1つ取り出した。
ひとつ上の段にはバナナが2本、隣には桃がある。
月曜日の朝に大家さんにいただいたものだ。
私はどうもバナナを食べるのには少し気力がいって、
別に嫌いなわけではないのだが、自分で買うことはほんとんどない。
そのような存在だからせっかくいただいたのだけれど
この6日ほど見て見ぬふりのようなことをしていた。
だが6日も経つと嫌でも目に入る。
皮がもうすっかり黒く染まり、その色でもって何かを訴えてくるのだ。
何かというのはもちろん、「早く食べてくれ」ということだ。
本のように買ってそのまま、というわけにはいかない。
手で掴んでみるとおそらく容易に握りつぶせるような感触があった。
今食べないと明日には無理だ。そんな予感がして2本とも取り出した。
皮を剥くと中は案外平気な時もあるが、今回は至る所が黒ずんでいた。
君はまだ大丈夫か?なんてバナナに聞くわけにもいかず
頼れるのは己の視覚、嗅覚、味覚、胃袋といったところだ。
見た目はお世辞にもいいとはいえないが匂いは甘くいい香りだ。
ええいままよと口に放り込んだ。
柔らかくて甘い。つまり美味い。それだけだった。
だが美味いからといってまた自分で買ってきて食べよう、とは思わない。
私とバナナの永遠に縮まらない距離感を感じた朝食になった。
おやすみ日本
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お盆到来。丸1日、茨城の実家に帰った。
地元の蝉も都会の蝉も大差はない。なのにどこか違う。おそらく気分が違うのだろう。
いわゆるオフの気分がセミの声を雑音から音楽に変えるのかしら。
網戸の向こう、カーテンの揺れる先から蝉の声が聞こえてくると妙に涼しげで心地よい。
今年は親戚が空の向こうに旅立ったものだから所謂新盆というもので。
父は襟のついたシャツをむず痒そうに羽織り、母はスティックの白髪染めを急いそと髪に撫でつけていた。
97歳になる祖母は「今年もじいさまが迎えにこないでどういう了見なんだ」というから
そういう了見なんだろうと笑った。
先日茅場町の先の永代橋から撮った夜景を見せると、「はぇ〜」とニッコリ。
「下は海かい?」
「隅田川だよ」
耳が遠いものだから、会話をするときは耳元で囁く。いや、割と大きな声で話す。
テレビでは高校野球が放送中。
9回表、3点差を追いかけて1点返したところだった。
どちらにも思い入れがなくても見応えのある場面だ。
盛り上がる応援席。
なんだかじいさんを探してしまう。
大の野球好きだったからここにいても何ら不思議はないなぁ、と。
東京に戻ると母から「あんた指輪忘れてるよ」とLINE。
利根川に放り投げてくれと頼むと利根川は遠いから那珂川にしてと返信が来た。
おやすみ日本
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今日も暑かった。寝起き早々、出窓の向こうで朝からセミが鳴いていた。
私はカリフォルニア大学で教鞭をとった叔父の影響でセミ語が少しだけわかる。
セミ語は基本的に主語+述語動詞+目的語+補語で構成される。
つまり英語で言うところのSVOC、第五文型。
叔父がいうにはツクツクボウシはセミではなく助動詞だそうだ。
しかしまあこうも暑いと部屋着はとても簡易的なものになる。
ステテコにタンクトップというような。
でもやはりステテコでは仕事モードにやや差し支えのある格好なので、
もう少しだけかしこまったパンツを履くようにしている。
タンクトップといえば、先日お昼に部屋でカレーうどんを食べていて、
途中で自分が真っ白いタンクトップを着ていることに気がついた。
白は汚れを呼ぶなんていうが、その時点では綺麗なまま。
カレーの汁は一滴もついていなかった。
しかし私は何を思ったのか、わざわざそこから雑な食べ方を始め、
食べ終わる頃にはタンクトップに数カ所のシミが付いてしまった。
洗濯機のそばでタンクトップに染み抜き剤を押し当てている時、
私は何故このタンクトップを汚さなければいけなかったのかを考えた。
その結果私は半ば数学的にこのタンクトップを汚したのだろうという結論に至り、
さっそく叔父宛にこの数式を書いたメールを送った。
2時間後、叔父から「人生において重要なのは運命と真剣に取り組むことである」と返信が来た。
カートヴォネガットの言葉である。
心は時より説明のつかない動きをするものだが
そこはカラスの勝手でしょ、というような気軽さで安易に流し山に帰すべきではない。
だが説明のつかないものを説明すること、理解することは非常に難しい。
解決策としては心に想像の理解者を飼い、飼いならすのではなく飼いならされることだ。
おやすみ日本
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2万年振りに6月中に梅雨明けとのことで、各地でアマガエルがデモを起こしているという。
エアコンも飛ぶように売れているという記事を見たが、
今年買った人たちは去年までどうやって夏を越していたのか気になるところ。
耐性も人それぞれである。
人間にはそれぞれ得手不得手があって、
いくらサウナがブームになろうがサウナの苦手な人には一向に響かない。
整う手段は何もサウナには限らず、私の友人は田所あずさの声を聞けばたちまち身も心も整うそうな。
人それぞれのスーパーキノコがこの世には用意されている。
私はたくさん食べるのが苦手であまり食べられない。
お酒はおそらく人並み以上に飲めるが、ごはんはよく食べる女子より食べられないと思う。
吉野家では小盛りを頼むし、よく食べる友人と飲みに行けばよく食べる友人を眺めているだけである。
先日期日前投票を終え、ちょうど昼過ぎだったので投票所の近くの喫茶店に入った。
カウンターにはベンシモンを履いた座敷わらしが象の消滅を読んでいて、私はその隣に座った。
メニュー表にカツカレーがあったので、私もこんぺい党党首になった気分で勝ちにいくことに。
ソフィーマルソー似の店員さんに大盛りにしますか?と聞かれたが前述の理由で断った。
しかし程なくして届いたカツカレーのまあ盛りのいいことよ。
こうなるともはや私は味より何より食べきれるかどうかで冷や汗が出てくる。
ただ幸いカツが薄かったので、どうにかこうにか食べ切れた。
実家で焼き鮭が食卓に並ぶ時、私が皮を残すとよくじいさんが言っていたことがある。
「鮭は皮がうまいんだ。水戸光圀はこの皮を取引の条件に使ったほどだぞ。彼は言った。
ただしこの皮の厚さが一寸あったなら」
じいさんのこの「ただしこの皮の厚さが一寸あったなら」の時の決まった!みたいな顔が好きで、
またじいさんもその話が好きで何度も何度も聞いた話である。
それから随分経ってじいさんが危篤だと連絡が入った時、
私は水戸に向かう新幹線に乗る前になんとなくホームのコンビニでカツサンドを買った。
お会計をして店を出ると姉から「今天国に向かいました」と連絡が入った。
もちろん車内でカツサンドなんか喉を通らなかった。
家に着くと、たくさんのカツ丼がテーブルにあった。
親父の妹、つまり爺さんの娘がとんかつ屋で働いていて、そこのだったと思う。
「じいちゃんカツ丼好きだったもんね」と姉が言う。
きっとじいさんは最後の最後に私を使ってカツサンドを食べようとしたのだ。
しかしあれ?娘がカツ丼持ってくるぞ!となって予定を変更。
そして家族揃ってカツ丼を食べることにしたのだ。
おやすみ日本
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先日コンビニの帰りに何かが右手に乗っかっているのに気づいた。
ほんの鼻くそ程度の小さな物体。
私はコンビニで梅おにぎりを買った帰りだったものだから、
何かの間違いで梅の果肉の一部が逃げ出そうとし、おにぎりの内部からは抜け出せたものの
私の手の甲までしか移動できなかったのかもしれない。
なんて思いながら顔を近づけて匂いを嗅いでみると、
味噌の匂いがした。
私はどういうわけだか、コンビニの帰りに小指の爪にも満たない小さな味噌を手の甲に乗せたのである。
しかしこれは匂いこそ味噌だが、味噌の匂いのする宇宙人かもしれない。
鼻ではなく耳を近づけたらトラルファマドール語を話すのかもしれない。
コンビニの帰りに手の甲に味噌が乗るのと味噌の匂いのする宇宙人が付着するのは
可能性としてはきっとトントンである。
しかし仮にこれが味噌ではなく本当に宇宙人だった場合、
私が耳を近づけた瞬間に私の耳の穴にシュッと入り脳内に侵入し、私を乗っ取る可能性も出てくる。
手の甲に乗るのは気を引くためのトラップであって本当の目的は私を乗っ取る、
いや、人類を乗っ取る計画の始まりなのではというところに思い至った。
そう考えたらもはやそうとしか考えられず、私は小走りで家に戻ってティッシュでその宇宙人を拭き取った。
私はこの瞬間、もしかしたら人類を救ったのかもしれない。
おやすみ日本
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先日ランチになんとなく見つけたお店に入ってみた。
シックな佇まい。チックコリアでも流れてきそうである。
カウンターとテーブル席が数席あったが、
空いていたのでテーブル席に案内してくれた。
カウンターにはベンシモンを履いた座敷わらしが座っていて、
長新太のキャベツくんを読んでいた。
壁には手書きでメニューがたくさん書いてあって、
おしゃれな名前の料理もあれば、カキフライや生姜焼き定食もあった。
生姜焼き定食を頼み、古本屋で100円で買った本をパラパラとめくる。
とても面白い。なんとなくネットで調べたらアマゾンで2000円で売っていた。
ヤフオクではなんと1万円で出品している人もいた。
今後プロフィールに買い物上手と書くことにしよう。
程なくして生姜焼きが届いた。
甘辛い味付け、大きめの豚肉。すこし硬めに炊いたごはんに濃いめのお味噌汁。
私にとってど真ん中の生姜焼き定食だったのだが、
興奮したのか上唇を思い切り噛んでしまった。
食後にコーヒーを頼み、値段のころころ変わる本をまたペラペラとめくる。
コーヒーは色が黒くて少し苦かった。
これでコーヒーまで唸るように美味いと出来すぎていて恐ろしいので、
少しホッとして店を出た。
春風を全身に受けながらいい気持ちで帰っていると、
踏切前で「あんたんとこ、明日行くからね。一週間くらいかな」と声をかけられた。
トラネキサムさんである。
翌朝上唇に口内炎ができたが、おかげさまで痛くない。
おやすみ日本
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私はラーメンが好きだ。
毎日ラーメンでもいいのではないかと思ったりもする。
でもやはりそれはよくない。
健康面はもとより、いくら好きなものでもそれでは飽きてしまう。
それに他の麺類のヘイト(嫉妬)を集めることになり危険でもある。
実際に1972年9月、ブリュッセルのアパート「cock and bull story」で起きた殺人事件において
地元警察が公表した犯人はなんとダイニングテーブルに残された食べかけのボロネーゼだったという。
死因はパスタが首に巻きついたことでの窒息死。
被害者は料理研究家のラザーニャ・リガトーニ(28)同年4月から日本料理、特に蕎麦の研究を開始していた。
それまで彼女は夕食といえばパスタだったが研究のために蕎麦に変更。
事件の起きた日は原稿用紙約3700枚に及ぶ論文を書き上げた記念すべき日であったという。
第一発見者の恋人、カール・スピラーレ(34)は現場の状況についてこのような発言を残している。
「私は確かに見た。窓から数本のパスタが蛇のようにスルスルと外に出て行くところを」
とにかく本当にラーメンが好きなのであれば、
好きであり続けるための努力をしなければいけない。
ではお互いの良好な関係の維持、継続には何が必要なのか。
これは人間同士と同じで、やはり一定の距離感である。
この考えに至った私は、毎月1日をラーメンの日として
年に12回の逢瀬を楽しむことに決定。
1日まであと2日。早く会いたくて仕方がない。
今のところこの麺距離恋愛はとてもうまくいっている。
おやすみ日本
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今日は非常に暖かい1日だった。
非常に暖かいというのは暑いということだろうか。
暑いとなると非情に暖かいといったほうが暑いような感じがあるような気がするけれど、
非情という言葉には冷たさが見え隠れするものだから、
もう私はどうしたらいいのかわからない。
物理的に暖かいと暑いの間に国境のように境界線があったとして、
私がどういうわけだかその境界の門番として決定権を持ったとすると
四月における27度は通さず、七月における27度は通し、九月における27度はコインを投げて決めるだろう。
私は一体なにを言っているんだろう。
あなたが物理的に理解のカフカの境界の門番であった時、
今夜の私を通してくれるだろうか。
そうしてあなたが私を理解して通してくれたとして、
私はあなたが私を通してくれたことを理解できるだろうか。
おやすみ日本
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前回の記事で書いた「渋谷で映画でも観よう」を先日決行した。
しかしこの日は特別天気がよかった。
そして私らはこれといって観ようと決めている映画もない。
ではこんなに機嫌のいい太陽と青空と南西のそよ風をあえて無視することもなかろうと、
まあ最悪見なくてもいいか、と落ち合って30秒で決め、
とりあえず昼ごはんを食べようとスクランブルスクエアに入った。
上の食事フロアを一回り。そしてとても個性的な椅子のあるスペイン料理屋を発見。
もはや料理よりその椅子目当てで入ったが、通されたのは残念ながら違う席だった。
あの椅子はおそらくアンディガルシアしか受け付けないのだ。
今の時間はすべてコースになります、とレアセドゥの親戚みたいな風貌の美しい女性に言われ、
メニュー表を開くとその大体のメニューに濃厚海老のなんちゃら、と書いてある。
私は海老との相性が悪いのだが、さらに「濃厚」とまで書いてある。
向かいの友人を見ると、ここで泡を吹かれて倒れられても困るから海老以外を選べという顔をしている。
他はスペイン風オムレツ、そしてこだわりの出汁のおじや。
オムレツとおじやなら私はおじや派だが、ここまで海老を推す店である。
おじやの出汁にももしかしたら海老が使われているのではないだろうか。
向かいの友人を見ると何度も言わせるなという顔をしている。
結局私はオムレツを、友人はおじやを頼んだ。
おじやには食後にケーキとコーヒーが付くが、私のオムレツにはなにもつかない。
オムレツの方が付きそうなセットなのにと思いながら私はスペインのビールを追加で頼んだ。
昼間のビールは喉と心、つまり人生を潤すものだ。とはブエノスアイレスの詩人の言葉である。
先に前菜のサラダが届いたが、君は前菜では収まらんだろうというような味。
スペインのビールはわざわざグラスに注いでくれた。ラベルを上に向けてワインのよう。
さすがアンディの椅子がある店ともなると接客にも力が入っている。
メインのスペイン風オムレツは私のオムレツという概念をメレンゲで包んで焼き上げたようなものだった。
ほのかに黄色い物体がふわふわとお皿というか丸い鉄鍋に入っていて、このふわふわは見た目を裏切ることのない食感。
まるで濃厚な泡を食べるようだった。
中には小さくカットされたジャガイモがたくさん入っていて、私はこのジャガさんの食物繊維に腸を占拠されたのか、
その晩自室で約2000回の放屁に成功するのはまた別の話である。
友人も私が知るなかでぶっちぎりの少食民族だがおじやもケーキもペロリと平らげ、
アイスコーヒーを飲んで涼しい顔をしている。
外に出ても変わらぬ晴天。結局映画は見なかった。
おやすみ日本
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友人と今度映画に行こうという話になった。
そのくせ別に観たいものも取り立ててないものだから、
では二人とも行ったことのない映画館を探し、
そこでたまたまやっている映画を観るのもいいのではないかしら、
ということになった。
場所は渋谷に決めた。
学生の頃、渋谷といえばミニシアターだった。
シネマライズが閉館した時、
このままぷよぷよの全消しのようなことになるのか、、
と懸念していたけれど、今現在も結構生き残っているようで、
マップ付きのミニシアター手帳というものまで配布されているではないか。
しかし私はここでよかったよかったなんて喜ぶ資格もないのだろう。
現状を知らないということは、結局ミニシアターから離れた人間でもあるわけで、
なんとも顔の合わせ用がないというか。
そうして俯き加減でユーロスペースのサイトをみると上映中の映画に何やら気になるものがある。
クリックすると思わず、お!と声が出た。
昨夜ベッドに入ってから眠りにつくまで
「あの映画なんだっけなー…」と随分と悶々としていたのだが、
まさかこんな形で出会えるとは。
これが久しぶりにミニシアターに興味を持ったことによる見返りとするならば
神対応もいいとこである。
おやすみ日本
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