米が炊けるまでの話
溜息山王

9月19日(木)、おーいお茶の夜です。

 

 

9月は時間の流れがとても早く感じる。

もうあと10日ほどで10月ではないか。

この感覚は8月にはなかった。

 

 

「あなたといると時間があっという間ね」という、

誰しも言われると嬉しい文句がある。

9月とはそういう存在なのだろうか。

 

 

友人にため息の似合うやつがいる。

いつも「はぁ」だの「ふぅ」だのいって世を憂いている。

こいつが女であればバストの先端でもつついて

「あっ」なんて言わせてやりたいところだが、

まあそれにしてもなかなか影があって色気のある男なのかもしれない。

 

 

彼にとっての幸福とは、時間が早く流れることであるのなら

この九月は嬉しいものであろうか。

だが別にそうでもないのだろう。

 

 

12もの月があって、四季折々の豊かさがあって、

それでも全てをため息まじりに苦月と呼ぶのでは私には耐えられない。

耐えられないけれど、気持ちはよくわかる。

 

 

先日自転車に乗って隣町に行く際に、

信号待ちでふと道端に視線を落とすと

轢き殺されたアブラゼミがいた。

 

 

もはや原型はほとんどなく、粉々である

それはそれはの様相であった。

 

 

こいつは何日めにふりかけになったのだろうか。

そんなことを思った。

セミは七日の命という。

初日でないのなら、彼らの時間で考えれば恋人もあったろう。

 

 

仮にこいつの恋人が生きていたとして、

彼女はため息をつくのだろうか。

 

 

だがそれはもう一週間ほど前のことであって、

もう誰も苦しまないのである。

 

 

 

おやすみ日本

 

 

 

 

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マジカルミステリーチェアー

8月20日(火)、ハーマンミラーの夜です。

 

 

先日いろんな人に薦められるアーロンチェアという椅子を新宿の家具店に見に行ってきた。

見に行ってきたというか座りに行ってきた。

 

 

この椅子を今まで知らなかったわけではない。むしろ欲しい椅子の筆頭格ではあった。

ただかなり値段もはるし、まあまあ座れる椅子もあるし、

そんなこんなでどこか高嶺の花として遠くから眺めたり絵に描いたり、そういう触れられない椅子だったのである。

だがしれっと訪れた腰痛をきっかけに、とりあえず一回座りに行ってみようと思いついたのだ。

 

 

受付でアーロンチェアはありますか?と尋ねると椅子なら地下に腐るほどありますとのこと。

階段を降りていくとすぐに目に飛び込んできた。

広い店内に客は私だけ。私と無数の椅子。少し恐いくらい椅子がたくさん。ヒッチコックの鳥を思い浮かべて欲しい。

あの鳥が全部椅子である。まあしかしテンションの上がる空間である。

 

 

とりあえず目に付いたものから座っていくと軒並みいい。もちろんアーロンチェアだけではない。

いろんな椅子がすべて魅力的、もはやスターダストプロモーションである。

 

 

なかでもエルゴヒューマンの腰にクッションがあるタイプの椅子は最高だった。

腰のところだけミシュランマンみたいにぽっこりと出ていてこれが猫背の私の背骨を優しく受け止めてくれるのだ。

背もたれに体を預ければもう戻ってこれないくらい気持ちよかった。もうこのまま死んでもいい。さようなら。

というところで店員さんに声を掛けられた。

 

 

そこからは愛想のいい店員さんによるマジカルミステリーチェアーである。

エルゴヒューマンはゆったり座れてとてもいいけど、お仕事用なら前傾できるアーロンチェアのほうがいいかもですよ、

アームレストがあるとないとで結構違いますよ、次はこちらの座ってみます?これは日本の椅子で、とてもいいですよ...

 

 

 

あと5分いたら買っていたと思う。

腹が決まったらまた伺います。

 

 

 

おやすみ日本

 

 

 

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水戸ホーリーナイト

8月17日(土)、ギャラクシーエクスプレスの夜です。

 

 

子供の頃、夏休みといえばおっぱいもないのに胸が踊ったものだ。

早起きしてラジオ体操、近くの大学にカブトムシ採り、

夜にはホタルを見に少し離れた川沿いに視力を8.0にブーストして見に行ったり。

結局ホタルが見れなくても天を仰げば星空があった。

 

 

祭りですくった小さな金魚は水を取り替える際に排水溝に吸い込まれ、

あの身の毛がよだつ感覚は私一人のものではないはず。

思い切り虫網を振ったら捕獲しようとしたトンボの頭が取れてしまった時と似ている。

 

 

好奇心に見合う、またはそれ以上の体力を自転車のペダルに乗せてどこまでも走った。

蚊に食われたひざ下の二本の足は布団に入るまで動きを止めなかった。

あらゆる感情を絞ったレモネードをガブガブ飲んで太陽に挑み、月に守られた。

 

 

 

 

盆は24時間実家の水戸に帰った。

6時間は姪っ子と遊び、18時間は酒を飲んだ。

母親の実家には一人笑という地元の焼酎があり、母親の兄がまあ飲めや飲めやというがまま、

2つ年上の従兄弟と競うように飲んだ。

人知れず親父はどっぷりと酒に浸かり、その日のことはほとんど覚えていないようだ

 

 

一度実家に戻り、帰り支度をしてばあさまのおでこにキスをし、4つ年下の従兄弟に駅まで送ってもらい、

駅近の居酒屋で焼酎を競い合った従兄弟とその伴侶と汽笛を待った。

 

 

2時間強で品川に到着。そこからどこだかは忘れたけれど3人でうまいラーメン屋に行って

一息にすすって解散。よく覚えていないけれどちゃんと帰ってきた。よく笑った24時間だった。

 

 

今でも夏は胸が踊るものだ。いつまでも胸は踊らせていたい。

暑い暑いも好きのうち。

 

 

盆が終わる。

大爺は今、ホームでスリーナインを待っているかもしれない。

 

 

おやすみ日本

 

 

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